恋愛工学戦士サウザーからの手紙

愛をとりもどせ‼︎

非モテだったころの話。就職する直前、内定者飲み会で起こった事。

そう。それはもう、昔の話。

 

僕が新卒で就職する直前の頃だったかな。

 

次の春から一緒に働く「内定者」どうしの飲み会があると聞き、当時、長く一人の世界に引きこもって勉学に励んでいたが故に、人付き合いが苦手になり、重度のコミュ障を患っていた僕は、何かの気まぐれで、この催しに参加してみたのであった。

 

たしか、2年ぐらいセックスしていなかった。

 

女の子とどう出会ってどう仲良くなってどうセックスに至るのか、遠い記憶の彼方にかすんでしまっていて、もはやイメージすることもできない。

 

目の前のオナニーは確かな真実で、恋愛とセックスは遠い世界の虚構なんだと思っていた。

 

とりあえず、「内定者の飲み会」とやらに行けば、新しい世界で新しい女の子と出会える。

 

その照れ臭いワクワク感を胸に、僕は、重い腰を上げ、引きこもっていた大学の図書館地下室の一角から、陽の当たる地上世界へと這いずり出た。

 

飲み会に行って思ったのは、ブスばっかだな、こんな女たちに俺はもったいないな、だった。

 

これぞ非モテの思い上がり、自意識過剰、オナニーのし過ぎ、当時の僕のすべての悪徳が表出して、腐臭を発してしまっているのであった。

 

飲み会は盛り上がっていた。

 

僕は一人の女の子に目が留まった。

 

おっぱいが大きな女の子であった。

 

一か月分の勇気をかき集め、その女の子の隣の席に移動した。

 

女の子は、酔っぱらって上機嫌に喋ってる。

 

「どっどどど、どこから来たんですか?」

 

清水の舞台でトルエンを売りさばくぐらいの覚悟で、僕は声をかけた。

 

その女の子が、どういう風に返してくれたのかは覚えていないが、非モテのコミュ障だった当時の僕に、優しく対応してくれたような記憶がある。

 

そう。女の子は、基本、弱い者には優しい生き物だ。 

 

僕は、必死こいて、丁寧な言葉遣いを心がけて、この女の子と喋った。

 

優しく、礼儀正しく、無害で、安心感のある男を演出した。

 

最近読んだ本の話(ドストエフスキーカラマーゾフの兄弟について)と、株式市場の話と、ニーチェの神は死んだの解釈についての話をした。

 

アピールするのに一生懸命だった。

 

死ぬほど白けた。

 

スタンドの力が発動して、真っ白になって時が止まったかと思った。

 

当然、話は一切盛り上がらず、いつしか僕は、無言でビールジョッキを傾けるだけが能のからくり人形と化していた。

 

地蔵である。

 

ほどよく酔っ払い、眠くなってきた頃、僕は重たくなった瞼越しに、とんでもない物を見た。

 

ちゃらついた雰囲気全開の「内定者」の男が、そのおっぱいの大きな女の子にビッタリくっついていて、ガンガン絡んでいるのである。

 

あろうことか、何度も同じ内容で、下らないボケで、その女の子に失礼な言葉を投げつけている。

 

「ちゃうわ!笑」

「やめてやもう!笑」

 

などと、女の子が上機嫌に笑っている事は、コミュ障の僕にもさすがに分かった。

 

しかし、しょうもないな、とも思った。

 

無礼で、粗野で、教養や知性のかけらもない男じゃないか。

 

くだらない。

 

僕にはかくかくしかじかの実績があって、最近はアルバイトもしなくていいぐらい成功しているが、その男はせいぜい居酒屋の時給の人間だろ。

 

そんな男より、僕の方が20000%いい男に決まっているというか、人間としての格が根底から違うと言うのに、なんで女はそんな簡単な事が分からないんだ。

 

なんで。

 

僕は困惑した。

 

女の子に失礼で不遜なオラついた態度を取っていて、好かれるはずなんか無いだろう、僕の方がむしろ好かれてるに違いないな、そう思ったが。

 

驚くべき後日談があった。

 

内定者の飲み会に顔を出した人間とは、入社後もなんとなく仲良くする。

 

「あの女とヤったで!」

 

「ほんまドエロやった!」

 

おっぱいの大きなあの女の子は、彼にあっさり即られたのであった。

 

僕には分からない世界があるんだな、と言う風に思った。

 

昔の話だ。

 

そう。それはもう、気が遠くなるほど。